速さがわかる記号と表現!テンポの感覚を掴むピアノ曲8選

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この曲どんな速さで弾くんだろう。。。

よく目にする速度を示す用語には、もちろんそれぞれ意味があります。

主な速度の表記と目安となるテンポ(※):

・Allegretto(アレグレット):やや速く

・Allegro(アレグロ):速く(愉快に)

・Presto(プレスト):急速に

・Lento(レント):ゆるやかに

・Andante(アンダンテ):歩くように、ほどよくゆっくり

・Moderato(モデラート):中くらいの速さで

※引用:音楽中辞典(https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?id=000170

とはいえ。。。、、すっごい感覚的!ですよね。速くってどれくらい!?適度って、なに!?むしろ疑問が増えたのではないでしょうか。

車の共通言語に「時速」を使うように、音楽の感覚的な速度の共通言語は「分速」です。どの長さの音符を1分間にいくつ打つ速さなのか。♪=60であれば、8分音符を1分間に60回、♩=60であれば、4分音符を1分間に60回、時計の秒針と同じリズムを意味します。

初めて楽譜を見るとき、調とあわせて仕上がりの速さを確認する「テンポ」。楽譜にある音楽記号は、イタリア語で表現します。強弱を示すp(ピアノ)やf(フォルテ)、実はイタリア語です。

なんと、クラシック音楽が成立した17世紀ごろには、イタリアの音楽家と演奏家が多かった背景で、楽譜の表記がイタリア語に。そのまま今に至っているとのこと。

慣れ親しんでいる音階名「ドレミファソラシド」も、なんとなんとの元を辿ればイタリア語。そして、アレグロやモデラート、楽譜にある速度表現も当然、イタリア語です。

曲の表現は演奏者によって異なります。とはいえ、楽譜に記された速さに関する記号や、それぞれの「速度」の感覚を掴むことは大切です。以降で、馴染みの深い実際のピアノ曲と重ねて解説します。

速いテンポ:アレグレットからプレストまで

一言に「速さ」と言っても、その表現は微妙に異なります

やや速く。中くらいの速さで。急速に。愉快に、軽快に。。。。。単語からその違いを区別するのは非常に困難です。

感覚値が人によって異なるように、絶対という速さはありません。したがって、曲の速さは大体の速度の幅で表現されることが多いです。さらに、音楽演奏は、フレーズや節目での一息などの抑揚があり、必ずしも一定のスピードで淡々と奏でるわけでもありません。

まずは速いテンポの感覚です。実際の曲の表記と、その演奏を参考に、拍の感覚を掴んでいきましょう。

曲の楽しげな性格のアレグロ!リズミカルな軍隊ポロネーズ

速く愉快に、を意味するアレグロ(Allegro)、軍隊ポロネーズの軽快なリズムにぴったりですよね。Allegroの後ろに続く「con brio」とは、発想記号の1つで「いきいきと」という意味があります。

速度記号は、音符の表記がない場合は4分音符分の速度を示します。この楽譜の場合だと、4分の3拍子、1小説には4分音符が3つ分の長さで連なっています。つまり、黄色の枠で括った1拍1拍が、この演奏でいうアレグロの速さです。

※source:  https://www.free-scores.com

※source: https://s9.imslp.org/

いかがでしょうか。リズミカルな、とんっ、とんっ、とんっ、というある程度規則的なテンポを掴むことができたでしょうか。

ショパンの軍隊ポロネーズ演奏にみるアレグロ(Allegro):

・Allegro con brioとは、速く(Allegro)+いきいきと(con brio)

・拍子記号は4分の3拍子。4分音符(♩)が1小節に3つ

・演奏の速さは♩=92くらい(ざっくり、アレグロの速度が120〜160あたりで示される数値との比較では少し遅め)

イタリア語で、元々は曲の楽しげな性格を表すのに使われた「Allegro」。軽快な「速く、愉快で、いきいきと」を感じることができます。

軽やかアレグレット!煌びやかなパガニーニ大練習曲集より

やや速くを意味する「アレグレット」。「やや」って何と比べて!?思いますよね。。

アレグレットとは、「歩くようにほどよくゆっくり」のテンポであるアンダンテよりも「やや」速く、ただアレグロほどは速くなく。という、アンダンテとアレグロの間の速度を意味します。

穏やかで華やかなパガニーニ大練習曲の第5番でみてみましょう。拍子記号は4分の2拍子、1小節に4分音符(♩)は2つ分です。

リズミカルなアレグロの要素を持ちながらも、包み込むような穏やかさが際立っていますよね。

リストの狩り演奏にみるアレグレット(Allegretto):

・Allegrettoは、アンダンテとアレグロの間の速さ。歩くようなアンダンテ(Andante)よりも「やや速く」を意味する

・拍子記号は4分の2拍子。4分音符(♩)が1小節に2つ

・演奏の速さは♩=90くらい(ざっくり、アレグレッとの速さは90〜120あたりの数値で示される)

ほどよくゆっくり、かつほどよく速く。心地よい中間のアンニュイを楽しむことができます。

拍より節で考えるプレスト!技巧の急速スケルツォ

アレグレットとは逆に、アレグロよりさらに速い速度をいうプレスト(Presto)。ヴィバーチェ(Vivace)と並んで、コロコロコロコロ流れるような、拍で数えることがままならなくなりそうな急速です。

演奏では、ショパンのスケルツォ。物静かに厳かな出だしながら、その速度はちょっぱや!拍というより小節でテンポを刻むくらいの急速さです。

拍でテンポを刻もうとすると、プルプルプルプル、大忙しです。

ショパンのスケルツォ演奏にみるプレスト(Presto):

・Prestoとは、アレグロよりさらに速い速度の「急速に」

・拍子記号は4分の3拍子。ただし、拍のカウントは困難なほど速く、1小節1拍がテンポとして刻みやすい

・演奏の速さは♩=220くらい(ざっくり、プレストの速度が170〜220あたりで示される数値との比較ではさらに速い)

・拍というより1小節でテンポを刻む方がリズムを掴みやすい(♩=220×3拍(÷3) → 80弱)

ちなみに、速く活発に、を示すヴィヴァーチェ(Vivace)は、プレストより気持ち遅く、プレストよりさらに速くなるとプレティッシモ(Pretissimo)という表現もあります。

遅めのテンポ:レントからモデラートまで

速さと同様、「ゆったり」と言っても、その演奏表現も単語の意味も絶妙に異なります。

緩やかに。幅広く。ゆっくりと。ゆるやかに。。。曲調として安定感漂うゆったりの遅めテンポも、曲の演奏と一緒にご紹介します

まさにゆったりのレント:アンニュイ漂うジムノペディ

ゆるやかに、を意味するレント(Lent)。後に続く「et douloureux」は、悲しげに、痛ましく。といった意味があるようです。言われてみると、重々しさや切なさが込められているようにも聞こえてきます。

テンポと曲の印象は、さまざまな意味で直結します。ゆったりの速さと静かに奏でる伴奏的なベース運びと和音が、厳かに染み渡ります

サティのジムノペディ演奏にみるレント(Lent):

・Lent et douloureuxとは、Lent(ゆるやかに)+douloureux(重々しく悲しげに)

・拍子記号は4分の3拍子。4分音符(♩)が1小節に3つ

・演奏の速さは♩=60くらい(ざっくり、レントの速度は40〜60あたりの数値で示される)

軽快な速さとはうって変わって、ずっしりと鍵盤の底の感触を味わうようなゆったりの音運びが印象的です。

歩く速度のアンダンテ:ぶれない平均律よりアヴェマリア

人が動くという基本挙動「歩く」。テンポにおいても、何かとベース指標としてアンダンテ(Andante)が登場することは多いです。後ろに続く「semplice」とは、英語だとsimple。素朴な、気取らない、無邪気な、といった、自然体への想いが込められています。

歩く速度がある程度一定であるように、バロック音楽時代の音楽の父、バッハの名作でその安定を実感しましょう。

しっかりと落ち着いて拍を刻むバッハ。中でもこの平均律第一番は、アヴェマリアの旋律と合わせて、フルートやヴァイオリンとのアンサンブルで耳にすることも多い名曲です。

バッハの平均律演奏にみるアンダンテ(Andante):

・Andante sempliceとは、Andante(歩くように、ほどよくゆっくり)+semplice(淡々と)

・拍子記号は4分の4拍子(記号C)。4分音符(♩)が1小節に4つ

・演奏の速さは♩=70くらい(ざっくり、アンダンテの速さは60〜100あたりの数値で示される)

心地よく、ゆったりと身を任せることができる安心のテンポです。

中くらいのモデラート:清らかベルガマスク組曲プレリュード

アレグレットと同様、「中くらい」ってどこの!?!?迷子になりがちのテンポ、モデラート(Moderato)。

モデラートとは、テンポのベースであるアンダンテと、速さの軸ともいえるアレグロの間の速度を意味します。かっこ書きの「tempo rubato」とは、ひとつの楽句内での速さを自由に変えて演奏することを意味します。

控えめながら、美しい旋律をなぞる、印象主義音楽の作曲家ドビュッシー。中でも月の光に代表されるベルガマスク組曲は、水の流れや、水に光がキラキラ反射する情景が連想されます。

まさに「中くらい」、ゆとりのある心地よいテンポを感じることができたでしょうか。tempo rubapoの自由度もわかりやすく、穏やかに落ち着く箇所と美しい旋律がパラパラテンポよく転がる加減で表現されています。

ドビュッシーのベルガマスク組曲演奏にみるモデラート(Moderato):

・Moderato (tempo rubato)とは、中くらいの速さで(Moderato)+控えめに、楽句内でテンポは臨機応変に(tempo rubato)

・拍子記号は4分の4拍子(記号C)。4分音符(♩)が1小節に4つ

・演奏の速さは♩=70から100くらいの間をゆらゆら(モデラートの速さが70〜120あたりの数値、ほぼフル活用)

美しい旋律そのものに加え、テンポの揺れにより、一層清らかなキラキラが惹き立ちます。

曲中も速度は揺れる!?冒頭ほのめく演奏と楽譜表現

これまで、曲全体の速さを示す、楽譜冒頭のテンポ記号と、その演奏を紹介してきました。

楽譜には、そのほか曲中にも、さまざまな変化のための速度記号が散りばめられています。少しずつを示す「poco a poco)」、変化した速度をもとにもどすことを示す「a temp」などはまさに、ちょっとしたテンポの変化を促す記号です。

とはいえ、楽譜の冒頭に示される速度記号は、その曲調や作曲家の時代により、その表現は大きく異なります。通常冒頭部に示される、曲全体のイメージを印象づける速度記号が、曲中に記載されている楽譜もあります。

以降、速度を揺らす、つまり曲を揺らすロマン派音楽の例をあげ、具体的に解説します。

ロマン派アンダンテ:憧れのショパンノクターン

ロマン派といえばショパン。そんな印象ありますよね。

ショパンはロマン派盛期に活躍した代表的な作曲家です。アレグロ曲の例で取り上げたポロネーズも、さらに速いプレストで取り上げたスケルツォも、共にショパンの作曲です。

加えて、曲中のテンポ表情豊かな「ゆれ」の実感。誰もが憧れるうっとりのノクターン(夜想曲)でみていきましょう。

まず、楽譜表現から個性的です。なんんと、8分の12拍子!そして、Andanteの速度記号と共に「♪=132」と音符目安の記載も!!

ざっくり、アンダンテの速さが♩=60〜100あたりの数値で示されることから逆算すると、冒頭の「♪=132」はつまり、♩=66くらい。とはいえ、楽譜表記は8分音符が3つで一括り、8部音符の3拍子の並びです。つまり、4分音符(♩)の表記では、実質曲調に合わないことから、小刻みの8分音符(♪)を基準にテンポ表示したのでしょうね。

もろもろロマンチックが溢れ出る要素が盛りだくさんです。

ショパンのノクターン演奏にみるアンダンテ(Andante、♪=132):

・Andanteの速さは、♪=132。♩にすると66であり、通常♩=60から100くらいで示される数値と合致

・拍子記号は8分の12拍子!8分の6拍子が2セットで構成、ゆったりでエレガントな1小節運び

・演奏の速さは、♪=60くらいから120くらいまでふわふわ。テンポの揺れが存分に感じられる

ハンモックに揺られるような、暖かで心地よい揺らぎがありますよね。逆に、無理にメトロノームと合わせるととぼ一定のテンポには収まりきらず、ロマンな揺れを実感できる1曲です。

アレグロからラルゴまで!表情満載アルペジオの幻想即興曲

音域広くコロコロ!のリズミカルな速いテンポといえば幻想即興曲、ショパン名曲の1つです。

冒頭のアレグロ(Allegro)の記号の後に続く「agitato」は、なんとイタリア語で「激して」。つまり、速く激しく。。。曲の印象ぴったりですよね。

そして楽譜の左側の「M.M.」、これは、メトロノームの発明者メルツェル(Maelzel)とメトロノーム(Metronome)の頭文字です。後に続く表記の意味は、「♪=132」であったノクターン同様、1分に幾つの速さかを示します。「メトロノームの指標では」といった、音符表記に対する解説をと捉えると良いでしょう。

この楽譜で示す分速は、2分音符=84(♩=168)からスタートです。

とはいえ中程、エレガントな旋律に変わる箇所(楽譜の下段冒頭)には、モデラート(Moderate)に変わります。激していたアレグロから少し落ち着いた「中くらいの速さ」に曲調が変化する重要な箇所です。

その、アレグロとモデラートをつなぐ2小節(楽譜の中段右側)はなんと、ラルゴ(Largo)です。ラルゴには「幅広く」という意味があり、レントとかなり類似する速さを示す速度表記です。

演奏はまさに、アレグロからリタルランドで少しずつ速さを落とし、ラルゴ(Largo)で幅広くゆったりと溜めを作っています。そうして、穏やかになる中間部のモデラート(Moderate)。続くカンタービレ(cantabile)は「歌うように」という意味があります。

ショパンの幻想即興曲演奏にみるアレグロ(Allegro、♩=168)からの変化

・冒頭のAllegro agitateとは、速く(Allegro)+agitato(激しく)。演奏の速さは♩=160程度、速く激しくコロコロパラパラ

・つなぎのLargoは、幅広く緩やかに。わずか2小節のその演奏速度は♩=60程度に

・中間部のModerato cantabileとは、中くらいの速さで(Moderato)+歌うように(cantabile)`

・冒頭部が繰り返す後半部は、なんとPresto!。アレグロよりさらに速い♩=180程度でラストスパート!

・テンポ記号「M.M.」は、メトロノームの発明者であるメルツェルとメトロノーム(Maelzel’s Metronome)の頭文字

中庭で歌うような、艶やかな中間部を経てのフィナーレのプレストが一際際立つ、激しくも優しい華やかな1曲です。

まとめ:速さを体感できる演奏とテンポ表現、記号と楽譜

これまで、音楽記号にみる速さを表す表現をその演奏曲と共に解説してきました。

・Lento(レント):ゆるやかに。♩=40〜60あたり。曲の参考は、サティのジムノペディ

・Largo(ラルゴ):幅広く。♩=40〜50あたり。曲の参考は、ショパンの幻想即興曲

・Andante(アンダンテ):歩くように、ほどよくゆっくり。♩=60〜100あたり。曲の参考は、バッハの平均律

・Moderato(モデラート):歩く速さのアンダンテと、速いアレグロの「中くらいの速さ」で。♩=70〜120あたり。曲の参考は、ドビュッシーのプレリュード

・Allegretto(アレグレット):歩くようなアンダンテよりも「やや速く」。♩=90〜120あたり。曲の参考は、リストのパガニーニー大練習曲

・Allegro(アレグロ):速く、愉快に。♩=120〜160あたり。曲の参考は。、ショパンの軍隊ポロネーズ

・Presto(プレスト):急速に。♩=170〜220あたり。曲の参考は、ショパンのスケルツォ

曲の雰囲気は、演奏者により、速度も雰囲気も異なります。とはいえ、楽譜に記載されたテンポをイメージしながら数多くの演奏を耳にすることで、速度記号と速さのイメージがシンクしやすくなり、あなたのテンポ感覚をより成長させることができます。そうして、あなたのテンポ感覚を磨くことは、あなた自身の演奏の精度の向上にも格段に後押しします。

ぜひ今日から、あなたのテンポ感覚、育ててみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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