ピアノの表現を豊かに!音楽のテンポを変える記号10選

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同じ曲なのに、、、全然違うように聴こえる。。。。。って思うこと、ありませんか?

紙の上の音符を音にすることは比較的直接作業ですが、「音色」に深掘りすると、全く別の難しさがあります。楽譜通り弾いているはずなのに、なんか物足りない、雰囲気を出せない。。。よく悩みます。今日は音が乗らないなぁ。。。その時の体調や気分で音色が左右されることも多いです。

同じ曲を演奏しても、人により印象が変わるのには理由があります。違いの理由は、歌に例えるとわかりやすいです。

<演奏者により曲の印象が変わる理由>

①「テンポ」が異なる:速度を遅くする、早くすると、リズムそのものが変わるように感じ、印象そのものがかなり変わります

②「溜め」が異なる:出だしと、乾燥に入る前の単語の末尾のトーンに、その人らしい歌い方のクセが出ます

③「音色」が異なる:同じ歌を歌っても、低い声、高い声、アニメ声、、声質により印象が変わるのと同じです

あまり意識したことはないかもしれませんが、クラシックピアノの楽譜には、曲の冒頭以外にも、速度に関する記号が点在します。

半音あげる、半音下げるなど、少しの音域が変わっても、実はそんなに違和感はありません。しかし、①や②の「速さ」に関する違いは、曲想をガラッと変えてしまうことが多々あります。

この記事では、楽譜にあるテンポを変える記号が、どのように曲想に影響していくのか、実際の名曲の演奏を通して具体的に解説します。

テンポ揺れって何!?バロックからロマンへの推移と代表曲

いやいやそうそうテンポってゆれないでしょ!!思いますよね。。

音楽表現、では同じ速度で奏でていると思っていても、、、、実は、結構、ぶれてます(笑

同じように、変わらず表現していると思っていても、、人によって、その表現、記号の捉え方、千差万別です。。

歴史的には、例えば音楽の父と呼ばれたバッハのバロックや古典派のモーツアルトは、規則規則正しさがベースです。全体を通して安定のテンポで、揺れが入り込む余地はほとんどありません。楽譜状の記号では、フェルマータやテヌートなど、短音に限って曲を揺らす要素を表現することが多いです。

【テンポがブレない古典派曲の例】

・バッハのクラヴィーア平均律曲集 プレリュードとフーガ No.1, KXV846:

・モーツアルトのソナタNo.16, K545 第1楽章:

※source: https://imslp.org/

カチッカチッと表紙を刻む拍の音が今にも聞こえてきそうな安定のテンポやリズムで、規則正しく演奏されています。

一方、クラシックの黄金期ロマン派、ショパンやシューベルトは、感情の揺れがそのまま演奏速度に現れます。数小節の単位で、ゆっくりめ、元のテンポで、たっぷりと。。。など、その音運びに込めた想いが、テンポに直結します。

【テンポ表現豊かなロマン派曲の例】

・ショパンのノクターン作品9−2:

・シューベルトのトロイメライ(子供の情景より):

※source: https://www.free-scores.com

ふわふわの優しさと共に感情や余韻がそのまま音の間に現れ、演奏の自由度やテンポの揺れに含みがあります。

曲想が自由で柔らかになるにつれ、テンポ記号はより重要な意味を持つように変化してきました。

とはいえ、クラシック音楽の伝達方法は、楽譜が全てです。つまり、「テンポを指示する記号」の理解により、あなたの演奏と演奏への想いは格段に変わります。

以降で、ロマン派でも馴染みの深いショパンの名曲ノクターン(夜想曲)を用いて、その記号の意味や演奏方法を読み解いていきましょう。

ピアノのテンポを司る記号たち:曲調を示唆する感情表現

テンポを指示する記号、あなたはいくつ思いつきますか?

人による演奏力の違いには、「音色」によることと、「テンポ」によることの2種類があります。

その中で、「音色」を司る楽譜記号とは、「どのような質の音を奏でるか」曲調を感情に訴える音楽記号です。

ロマン派の、誰もの憧れショパンのノクターン(夜想曲)作品9−2。艶やかで優しいこの名曲には、以下の曲調に関する表記があります。

ノクターンにみる曲調に関する記号:

・dolce(ドルチェ): やさしく。やさしさに豊かさを添えて穏やかに

・dolcissimo(ドルティシモ): すごくやさしく。優しさを際立たせ宝石級の繊細に

・con forza(コンフォルツァ): 力強く。華やかな盛り上がりへ

・stretto: フーガの追迫感、緊張感を持って

・senza: 消えるように。余韻が惹き立つ曲調変化

※source: https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?id=000170

イメージはわかりますけど、、、、って、なりません?(笑

やさしさも力強さも、緊張感も、もちろん理解はするけど、、。ねぇ!?

なので、曲を聴きながらイメージしてみましょう。

ドルチェ:やさしさに豊かさを添えて穏やかに

冒頭の、p(ピアノ:弱く)の隣に突如現れる曲調記号dolce。やさしく、だけでなく「甘く」というニュアンスもあり、穏やかさと連動します。

さらに、この曲の場合は、前にespre.(espressivoの略:表現豊かに)がプラスされ、より一層、壊れ物を包み込むような暖かさが増し増しです。そのほか、冒頭の2小説だけでも、音楽表現に関する記号はたくさんあります。

ノクターン冒頭2小節にある、ドルチェ以外の音楽記号:

・拍子記号:この曲は8分の12拍子。8分音符12個分で1小節が構成されます

・速度記号:この曲はAndante(アンダンテ)。歩く速さで。具体的には、♪=132(1分に、8分音符132個分の速さで)

・ペダル記号:筆記体のPedと*。音を響かせる右側のペダルを踏む(Ped)場所と離す(*)場所を示す

・♭(フラット):半音下げる

・音の上の「・」(スタッカート):音を切り離して

・音の上の「ー」(テヌート):音をながさいっぱいに伸ばして

・(を横にして音を跨いだ記号(スラー):演奏をひといきで

・Sを横にした記号(トリル):周りの音を一緒に(この場合は5音、指は14321の順で)

・<(クレッシェンド):だんだん大きく

なんと、ちょっと羅列しただけでも楽譜は演奏を奏でる記号で溢れています。

冒頭の右手の旋律が、ドルチェの優しさと豊かさを忠実に、この上なく繊細に始まっていることが伝わるでしょうか。

さらに、2小節目の冒頭、左手の1音目はテヌート。ドルチェを際立たせるような、まろやかなゆったりさが加わっています。

音楽記号に加えて、曲想を示唆する記号を意識することで、あなたらしい音楽表現をよりイメージしやすくなります。

ドルティシモ:すごくやさしく宝石級の繊細に

コーダ部の入り口はpp(ピアニッシモ:ごく弱く)で、たっぷり溜めた後に現れる、dolciss.(dolcissimoの略:すごくやさしく)。高音の繊細な音運びが際立つ、表現豊かなクライマックスのイントロです。

ごく弱く、そしてすごくやさしく。前後に連なる音楽記号で音運びは一層深みを増します。

ノクターンのコーダ入口、ドルティシモ以外の音楽記号:

・ガタガタ「w」を連ねた記号(トリル):周りの音を一緒に(この場合は3音、ミを軸にミファミ)

・♪にスラッシュをのせた装飾音:次の音を飾るように軽めに

・♯(シャープ)に似た記号ナチュラル:本位記号。♯(半音上げる)や♭(半音下げる)のつかない原音で。

・♭♭(ダブルフラット):半音2つ(=1音)下げる

・1音の上の「>」(アクセント):その前後の音より強勢をおいて

まろやかに、装飾音などを付加し、さらに優雅で繊細に。艶やかさが際立ちます。

雰囲気を音色に展開する、それが音の「感情表現」です。この後のコーダ展開が気になる優雅で撫やかなイントロです。

コンフォルツァ+ストレット:力強く緊張感を持って

やさしくソフトな入口から、華やかな盛り上がりへ。「強く」を示すフォルテとよく似たforza(フォルツァ)には「力」という意味があります。

力をためて掬い上げるようなパワーが音運びで表現されています。深身の強い低音部から一気に華やかな高音へ。続くstretto(ストレット)で、そこに緊張感を上乗せしています。速度記号に加え、音楽記号にも華やかな鋭さが加算します。

クライマックスの煌びやかさを加算する音楽記号:

・音に向かう「▼」「▲」(スタッカティッシモ):音を繋げずに、スタッカートよりも鋭く切り離して演奏すること

・tr(トリル):ガタガタ「w」を連ねた記号(トリル)と同意。周りの音を一緒に(この場合は3音、ラを軸にラシ♭ラ)

・点線前の「8」(オッターヴァ):イタリア語ottava。オクターブを意味し、音符の上の点線はオクターブ音をあげることを示す

音も短音からオクターヴになり、緊張感ある華やかさに進化します。

strettoは、元々はフーガの曲調で使用される音楽表現で、緊張感を高める効果があるという意味を持っています。応答が主題の完結を待たずに現れることが起因しています。楽譜に込められたクライマックスへの想いを読み取る実感、ワクワクしてきます。

センツァ:消えるようなエンディングに余韻を

クライマックスから続くエンディングに、senza(〜なしに)という記号。激しく力強く盛り上げた響きの余韻が惹き立ちます。

音の移動も、温かみのある低音、左手でやさしく水を掬い上げるような、穏やかな運びです。

憧れのノクターン。テンポ記号が示す曲調を深ぼることで、より身近によりノスタルジックになったのではないでしょうか。

ノスタルジックなエンディングに向かうタメの音楽記号:

・半円に中黒のお鍋の蓋のような記号フェルマータ:拍子の運動を停止するすることを意味する

フェルマータで、一旦停止し、曲の締めにはいる。なんとも美しい曲調運びです。

よく知り考える。曲のイメージを膨らませてみることで、あなたの「曲調」を表情豊かに進化させることができます。

ピアノのテンポを司る記号たち:繋ぎを示唆する調整表現

あまり意識したことはないかもしれませんが、テンポに関する記号の周りには、段階を意味する記号も幾度となく登場します。

<テンポに関する記号>

・poco:少しずつ

・rit. / ritard. / ritardanto: リタルダント だんだん遅く

・a tempo: 元の速さで

・sempre: 淡々と(つねに、あいかわらず)

・rall. / rallemnt. / rallemntando だんだん緩やかに

・rubato: 「盗まれた」の意味。1つの楽句内で速さを自由に変えて演奏すること

・smorz. / smorzando: だんだん遅く、消えるように

改めて、ショパンのノクターン作品9−2を通しで確認してみましょう。速度に関する記号に加え、つなぎを示唆する表現が曲の表情をより豊かに、繊細に創り上げていることを確認できます。

実際の演奏と楽譜記号を見直すことで、曲想が変化し、ノスタルジックをどう創造しているのか、感じ取ることができたでしょうか。

「テンポを揺らす記号」に気持ちを乗せることは、あなただから表現できる、美しい「音色」を奏でることに直結します。作家が込めた音楽記号への想いを表現することで、あなたならではの作曲家の想いに想いに寄り添った演奏、ができるようになります。

まとめ:ロマン派の名曲ノクターンにみるテンポ変化記号たち

これまで、音楽表現の速度に関する記号について、有名なショパンのノクターン作品9−2を通して手繰ってきました。

ショパンのノクターン作品9−2を通してめぐる速度記号:

・dolce(ドルチェ):やさしく。やさしさに豊かさを添えて穏やかに

・dolcissimo(ドルティシモ):すごくやさしく。優しさを際立たせて宝石級の繊細に

・con forza(コンフォルツァ):力強く。華やかな盛り上がりに力を

・stretto(ストレット):フーガの追迫感、緊張感を持って

・senza(センツァ):消えるように。余韻の浸透に味わいを

音楽のテンポは、冒頭で決まるものではありません。曲に込められた速度記号への想いを読み取り、あなたらしい表現を存分に発揮できるよう寄り添うことはそのまま、あなたの音楽表現の豊かさに表れます

楽譜を見て演奏するとき、あなたはどう楽譜を読んでいますか?音符を追うのに精一杯であったり、耳に残っている曲のイメージを思い浮かべたり。曲想を表現できるようになることは、そのまま曲想表現のステップです。

ぜひ、あなたらしい曲の解釈と表現、速度に関する記号をきっかけにもっともっと豊かに育ててみてください。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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