クラシック作曲時にピアノはなかった!?鍵盤数や塗装の歴史

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ピアノって、本体は黒くて、ペダルがあって、白鍵と黒鍵が並んでてて。。。あたり前と思ってますよね。

現代ピアノは88鍵、音域にすると7オクターブ強が常識でありメインです。

しかし、その歴史た元を辿ればなんと11世紀!弦楽器であり鍵盤楽器であるピアノには、現在の容姿に至るまでに長ーい歴史があります。

驚くことに、ペダルや音を出す構造のみならず、音域までもが現代に至るまで変化しています。

チェンバロの時代のシューベルトの名曲、バッハの時代のオルガン。

皮肉にも、ピアノで弾くシューベルトとチェンバロで聴くシューベルト、同じ曲でありながら、その印象は劇的に異なります。

曲が作られた時代の楽器そのものの奏でる音源で聴くことで広がる世界は一際です。

この記事では、ピアノの音源となったオリジナルの楽器、そして今のピアノに至るまでの楽器の変遷を順を追って紹介します。

音の構造の源は11世紀に!ダルシマーという弦楽器

ダルシマー、聴いたことありますか?

聴くよりも何よりも見てみると「おぉっ!!」となる、ピアノの祖先です。

そうなんです。ピアノは弦楽器で打楽器、その構造の発端はなんと11世紀の中東にまで遡ります。

写真はピアノでいうフェルト製のハンマーを手で持ち、横たわる弦を叩いて音を奏でる構造で、16世紀にヨーロッパで広まったタイプです。

まさにピアノの構造を手動で奏でている原型ですよね。

ダルシマーによるアルハンブラ宮殿:切なくも絶え間なく連なる高音がとめどなく美しい、繊細でデリケートな高音

今にも壊れそうな繊細で洗練された音響。柔らかくも鋭く研ぎ澄まされた音色。

個人的には、アイルランドハープの繋がりでダルシマー奏者と出会ったのがこの楽器を知るきっかけでした。

ダルシマー、ピアノの先祖であると意識すると、より一層その繊細な音を奏でる構造に関心が湧いてきます。

クラヴィーコード:なんと4〜5オクターブの鍵盤楽器!

クラヴィーア、クラヴィノーヴァなど、なんとなく印象が共通する名称。

作曲された時代のピアノの特徴や技術にフォーカスするだけで、演奏への想いはかなり変わります。

13世紀に生まれたクラヴィーコードは、4本脚の四角い鍵盤楽器、真鍮の棒が弦を打ち音を奏でる仕組みでした。

鍵盤楽器としての歴史は古いオルガンは音管に空気を送り込む仕組みで、クラヴィーコードとは構造が異なります。

脚の形など、まさにアップライトピアノですよね。

そして、見るからに音域は狭く、その幅は4オクターブ程度。

とはいえ、打楽器であり鍵盤楽器であるピアノの普遍要素をしっかり感じられる画期的な楽器です。

クラヴィーアの音色、教会に響くパイプオルガンや、弦で奏でるハープのような弾き音に共通しますよね。

このクラヴィコード、18世紀頃まで長期間に渡り活躍し、バッハやハイドンの演奏際立つ楽器でもあります。

バッハの名曲:

・インベンション:2声体鍵盤楽曲第1番ハ長調(C Major, BWV 772)

・平均律:クラヴィーア曲集第1巻第1番ハ長調(C Major BWV846)

全ての調の前奏曲とフーガのセットである平均律は、まさにバッハのクラヴィーアへの想い込もる曲集です。

さらにその第1巻第1番、アヴェマリアの旋律であまりに有名ですよね。

鍵盤を弾き弦を弾く打楽器感。ペダルなどの発想はなく、音の強弱もある程度一貫しています。

インヴェンションなどパイプオルガンに通じる曲調が印象的なバッハは、熱心なクラヴィーコード支持者でした。

ピアノの演奏への想い入れと音の出し方や響き方。

作曲者が生きた時代に使用していた楽器に想いを寄せてみることで、演奏の深みは自然に変わってきます。

ハープシコード:チェンバロで親しみあるイタリア発の美術品

チェンバロなら聴いたことあるけど。なんて方は多いかもしれません。

ピアノは大きな楽器です。その面積の広い外観を装飾し、芸術品として広がった楽器、それがチェンバロです。

ハープシコードとはその英語読みであり、音は、弦を弾いて鳴らす「撥弦楽器」でした。

ホームコンサートや気さくなアンサンブルを開くことも多かったという時代。

家具やインテリアのように、チェンバロの外観にもこだわることはステータスだったのかもしれません。

チェンバロで聴く名曲たち:

・バッハ(1685-1750):15の2声インヴェンション

・ハイドン(1732-1809):ソナタ第52番変ホ長調

・モーツアルト(1756-1791):ソナタ第11番第1楽章(K331:第3楽章はトルコ行進曲!)

時代が後半になるモーツアルトの曲特には、鍵盤の端から端まで音域フル稼働が印象的です。

ところで、動画での鍵盤の配置や色について「あれ!?」と思った方がいるかもしれません。

そうなんです。当時のピアノには、今でいう黒鍵と白鍵の色が逆のものが数多く存在します。

その理由はなんと、白い鍵盤の方が高価だったからです。

さらに、鍵盤が2段になっているものも!!

これは、上のハイドンの演奏がわかりやすく、弱い音を上段で、強い音は下段で表現するためでした。

チェンバロ構造の不思議:

・鍵盤が2段!?:撥弦の技術では音の強弱が出しづらかったため、弾く度合いを段で分割!

・白鍵が黒鍵!?:元々は象牙と黒檀。高価な象牙は鍵盤数の少ない黒鍵部に使われていた!!

クラヴィーコードの時代に作曲されたバッハの名曲は、チェンバロの演奏も多く、その音色の美しさは一際です。

ピアノ・エ・フォルテ:音域5−7オクターブをフル稼働!

ピアノって、フォルテ(強く)とピアノ(弱く)のピアノなの!?驚きですよね。

チェンバロではできなかった「タッチによって強弱を表現できる楽器」が、ピアノの特別でした。

特徴は、ハンマーアクションを備えた発明。

ピアノの改良と作曲のバラエティの推移を重ね合わせてみることで、曲の見え方が変わってきます。

18世紀の初めに発明された初期から、ペダルや連打性能への改良が加わり、今のピアノに至っています。

音域の拡張や作曲家の活躍時期のによりその特徴の差は顕著です。

5オクターブピアノと作曲家の名曲:

・ハイドン(1732-1809):ピアノソナタ第47番第3楽章Sonata No. 47 in B Minor Hob XVI 32 III)

・モーツアルト(1756-1791):ピアノソナタ第1番のフォルテピアノによる演奏

同音の連打や規則正しく軽快なリズム構成などペダルを使わない演奏技術がふんだんに盛り込まれています。

また、ピアノフォルテの演奏でみてみると、優しい音色や当時の限界5オクターブ音域のフル稼働っぷりは、よりわかりやすいです。

7オクターブピアノと有名作曲家のフォルテピアノ演奏:

・ベートーヴェン(1770-1827):ソナタ第14番(月光:No. 14, Op. 27)

・シューベルト(1797-1828):アンプロンプチュ(即興曲)第1番

・メンデルスゾーン(1809-1847):無言歌集作品67−2&4

・シューマン(1810-1856):アラベスク作品18

・リスト(1811-1886):超絶技巧練習曲 第10番「熱情」

拡張された音域のフル稼働と共に、連打やペダル使い、音の強弱変化など作曲バラエティが豊かになっています

ピアノそのものの変化と作曲の曲調の変化は連動しています。

楽器のキャパシティを理解することで、曲に込めた想いにをより組み込んだ演奏が可能になります。

現代のピアノとアップライト:日本のピアノはなぜ黒い!?

ところで。ピアノって黒いって、思ってませんか!?

日本へのピアノの浸透は20世紀。適応のための工夫の理解は、そのままピアノへの理解に直結します。

本来ピアノは美術品。その材料は木製でした。

して、アップライトピアノでは、シャンデリアライトや燭台がついているピアノも多くありました

実際、私が海外でレンタルしたアップライトピアノにはシャンデリアライトがついていましたし、当時の居住地近くのオペラハウスには、古いピアノとして燭台のついたアップライトピアノが展示されていました。

燭台やシャンデリアライトは、単純に、楽譜を読みやすくする明かりの工夫です。

思わず「Up-light??」と思いたくなりますが、名前の由来は「Upright(直立している)」が正しい綴りです。

とはいえ、その彫刻やデザイン、美術品にふさわしく美しいですよね。

そして、なじみの黒色は、湿度の高い日本への適応のための塗装が始まりでした。

日本に定着したピアノの個性:

・アップライトピアノ:家庭内にも配置しやすい、直立「Upright」式のピアノ

・黒いピアノ:湿気などの影響を受けにくくする黒漆塗装

そして、今ではすっかりあたり前の黒いピアノ。

本来木製で表面積の広いピアノは、湿度や温度の変化による収縮影響が大きいです。

そこに音の変化を少なくするために施された黒漆の塗装は、高級感やフォーマル感の定着にも貢献しました。

今では、海外のコンサートホールやライブハウスに、黒いYAMAHAやKAWAIのピアノを見ることも多いです。

使いやすさと高級感。その歴史や背景を理解することで、ピアノへの愛着がより深まります。

まとめ:ピアノの歴史と音域拡大がもたらした日本への適応

これまで、ピアノの歴史と日本への定着について解説してきました。

・ピアノの元祖は11世紀の打楽器「ダルシマー」

・アップライトと同じ四角い先祖は13世紀の鍵盤楽器「クラヴィーコード」

・音域や音の強弱にこだわりの14世紀に誕生した「チェンバロ(=ハープシコード)」

・音域を7オクターブまで広げた「ピアノ・エ・フォルテ(現代のピアノの構造)」の誕生は18世紀

・鍵盤(白鍵は象牙、黒鍵は黒檀):安価であった黒檀は鍵盤数が多い今の白鍵に使われていた!

・ボディ:本来は木製の美術品。黒漆塗装は湿度の多い日本浸透への工夫!!

ヨーロッパで生まれたピアノ、日本への浸透には「黒漆の塗装」が決め手となりました。

そして、気候変動の影響の小さい黒いボディは、多くの海外に受け入れられ、日本からの逆輸入も頻繁です。

鍵盤楽器の構造やピアノに施された工夫への理解は、音域や強弱に対する作曲家の想いの理解を深めます。

ぜひ、あなたが表現するピアノ演奏に、現代のピアノの表現力堪能のエキス、今日から加えてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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